「減らそう!」数字で学ぶフードロスの現在と未来
SDGsに定められた17の目標と169の達成基準は、そのどれもがわたしたちが地球で暮らし続けていく上でとても大切なものです。しかし、中には壮大すぎたり抽象的だったり…自分に何ができるのか、わからないものがあるかもしれません。
今回は、誰にとっても無視できない「食」の問題、具体的な達成基準にもなっている「フードロス」の今とこれからについて、数字をテーマにお話します。
■1年で廃棄される食品量は世界で約13億トン
SDGsが広まるにつれ、「フードロス」という言葉も一般的になりました。しかし、その状況はみなさんの想像よりも、少し深刻かもしれません。
国連食糧農業機関によれば、世界では毎年13億トンもの食べ物が捨てられています。これは食用に生産されている食料全体の3分の1に相当します。では、日本はどうかと言えば…なんと年間およそ600万トン、みんなが毎日おにぎり1個分の食品を廃棄しているのが現状なのです。
日本の食料自給率はカロリーベースで約38%、つまり食べ物が足りなくて海外に頼っている状況にも関わらず、それらを大量に捨てているなんておかしな話です。そして、飽食の国がある一方で、SDGsにも掲げられているように、飢餓に苦しむ人がいることも忘れてはいけません。
■ハンバーガー1つに必要な水は約1,000リットル
環境問題への影響も甚大です。
国連食糧農業機関によると、フードロスによって排出される温室効果ガスの量は二酸化炭素換算で約36億トン。これは、世界の温室効果ガス排出量の約8%に相当します。
また、ハンバーガー1個に使われている小麦や牛肉を生産するためには、999リットルの水が必要だと言われていたり、廃棄される食料を生産するために、世界の農地の30%近くが使われているという報告もあります。
つまり、フードロスを減らすことは、わたしたちの食卓はもとより、地球環境や他国の人を助けることにもつながっていくのです。
■フードロス削減に取り組んでいる人は76.6%
もちろん、こうした状況を「何とかしたい」と考える人が増えてきています。2020年の段階で、食品ロス削減のために何らかの行動をしている国民の割合は76.6%(※農林水産省「我が国の食生活の現状と食育の推進について」より)。そして、残りの約25%の人たちも、食への考え方に罪悪感を持っているとの調査データもあります。
SDGsに対する関心や意識は広がってきており、大切な「食の問題」への解決に向けた機運は確実に高まっていると言えるでしょう。その意識やアクションを、もっと当たり前へとつなげることが、フードロス削減を推進します。なぜなら、国内における食品ロスの半分近くは、わたしたちの家庭から発生しているからです。
■家庭系食品ロスの最大要因は57%の食べ残し
国はこれらの「家庭系食品ロス」、そして「事業系食品ロス」をともに、2030年度までに半減するという目標を立てています。
「事業系食品ロス」においては、ニュースでご存知の方も多い「恵方巻の大量廃棄」などに代表される需給ギャップによる廃棄や、見た目が良くないからという理由で捨てられてしまう規格外品、業界の商慣習である「3分の1ルール」などが大きな原因となっています。
一方「家庭系食品ロス」では、食べられる食品を捨てた理由の1位が「食べ残し」となっており、約57%を占めています(※消費者庁「食品ロス削減に関する実証事業」平成29年)。
家庭では食べ残しのないよう気をつけていても、お酒の席なども含めた外食時はどうか…、今一度、食習慣を見直すことで、より削減に貢献できる可能性がありそうです。
また、近年問題となっている「飲食予約のドタキャン」も、店舗への損害は当然ですが、食品ロスの原因になることも覚えておいてください。
■フードロス削減に貢献する3つの考えかた
ここまでを踏まえて、今日からわたしたちが実行できる具体的な考えかたや行動については、こちらの3点を意識するのが効果的だと考えます。
1. 食材を使い切ること
2. 必要な分量を買う・頼むこと
3. 適切に保存して食べること
1や2は心がけでできる部分も多いと思いますが、3は少し知識が必要かもしれません。特に「期限表示」に関して誤解されやすいのが「賞味期限と消費期限」についてです。
前者はおいしく食べられる期限のことで、この日を過ぎた食品が即座に食べられなくなるわけではありません。一方「消費期限」は安全に食べられる期限、期日を過ぎたら食べないのが原則です。
しかし、多くの人が賞味期限・消費期限が長い商品を選ぶ傾向があります。その結果、古い商品が売れ残り、食品ロスを生み出すことにつながりかねません。すぐに使う可能性が高いものであれば、期限が近い商品を購入することで、ロス削減に貢献できます。
また、昨今では食品の保存期限を延長する包装技術なども一般化しています。そういった食品を購入するなど、ロスを発生させないように「適切な食材の保存」を意識してみてください。
■オールジャパンで食の課題を解決する
前述のように、食品ロスには「事業系食品ロス」と「家庭系食品ロス」があるため、2030年度までの削減目標達成には個人・事業者・自治体・NPO法人など、さまざまな領域での意識改革や施策が必須となっています。それを受けて、食品業界でも様々な食品ロス削減に向けたアクションやルール改正がはじまっています。
わたしたちが日常生活での食品ロス削減を意識するとともに、こうした「事業系食品ロス」領域の動きに対してもアンテナを張り、正しい行動をしている人や企業を応援する姿勢を持つことで、フードロス削減のうねりはより大きくなり、目標達成に近づいていくでしょう。
大切なことは、これらをスローガンで終わらせないこと。できることをはじめていくこと。
わたしたちの食卓は、自分たちで守ることができるはずです。